3月17日に、インフォーカス主催で『一人っきりの出版社 新潟インタビューマガジンLife-mag. 小林弘樹さんトークイベント』を行いました。会場は、Vol.1の取材でお世話になり、その後色々アドバイスいただいている『book cafe 火星の庭』。
イベントの主役は、新潟のローカルマガジン『Life-mag.』の編集・発行人である小林弘樹さん。
私が作っているインフォーカスという雑誌は、この小林さんがいなければ生み出されることはなかったので、ぜひ宮城にお招きして話を聞きたい。そして、宮城のみなさんにもLife-mag.を知ってほしいということで企画したものです。
Life-mag.はこれまで宮城では取扱いがなくて、認知度の低い雑誌だったので人が集まるか心配でしたが、一週間前には募集定員に達し、結果、当日は30名ほどの方に集まっていただきました。

小林さんは1983年生まれ。大学卒業後、地元の新聞販売会社に就職。
「当時の自分にはたぶん見えてなかっただけ」とした上で、「毎日の仕事のサイクルの中で完結する人間関係にせまくるしさを感じた」と、Life-mag.創刊へつながるきっかけを話してくれました。
それに何より、何かを表現したいという衝動が、コップに注いだ水のようにあふれ出したという小林さん。新聞販売会社を退社し、25歳のときに一人で出版社『エイチ.ケイコネクション』を設立。ローカルインタビューマガジン『Life-mag.』を発刊しました。

それまでに取材や出版、経営の経験があったわけではなく、全てが手探りのスタートだったようです。まずパソコンとカメラを買うところから始まったというLife-mag.
もちろんインタビューも初めてで「最初のインタビューで、ボイスレコーダーを押した途端、何をどう聞いたらよいのか、頭が真っ白になった」とのこと。

インタビューマガジンというコンセプトには、「言葉ひとつとっても前後の文脈で全然違ってくる意味の多様性を大切にしたい」という小林さんのこだわりがあります。
そのこだわりの根っこには、自ら死を選んだ同級生の存在があるようです。
「さっきまで一緒に楽しく遊んでいた人が突然いなくなってしまった」という経験に、人の言葉を本当に理解することの難しさを感じた小林さん。優れたプレゼンように分かりやすく割り切れはしない人の思いの心底を汲み取ろうと、インタビュー記事の言葉の調整には、非常に気を使っているとのこと。

今、私自身がインフォーカスの営業に回っていて、よく言われるのが「この本のターゲットは誰なの?」、「何をしたいのかわからない」ということ。小林さんもまったく同じことを言われてきたそうです。
つまり、Life-mag.は、マーケティングから逆算してできた雑誌じゃない。だから人の多様性、地域の多様性を記録できるのだと思います。
「アートの文脈で興味を持って読んでくれた人が、となりに載っている政治家のインタビューを見るとか、あるいはその逆があったり」
ターゲッティングで人や地域を区切るのではなく、有機的な興味のつながりの中で人を理解し、地域を理解しようとする、その姿勢こそが、他のどんな雑誌にもないLife-mag.の魅力なのかもと思いました。

小林さんとは何回か直接お会いして話をしています。Life-mag.は言葉に埋め尽くされた雑誌だし、小林さん自身が書く文章も鍛え抜かれた言葉が印象的です。でも、実際に話してみると小林さんはそれほど饒舌な印象はなく、飄々としていてとらえどころもありません。
それは、何か解かったような気になるヨコ文字言葉や効率の良い定型句に頼らないで自分の言葉を探ろうとする誠実さであり、「分かりやすさ」よりもむしろ「分かりにくさ」によって何かを表現しようとするLife-mag.という雑誌を象徴しているようでもあると、改めて感じました。

【↓当日配布した資料をダウンロードできます】

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相沢 由介

1980年生まれ。 インフォーカスの取材・編集・発行を全て一人で行っています。その他、フリーのカメラマン・ライターとして、紙媒体の企画や取材、企業や個人事業の広報物・WEBサイト等の作成を行っています。