買い物のありかた

ファストフードのように高度に効率化・合理化した現在の買い物。便利になった一方で失われた買い物の付加価値とは?

文・写真=相沢由介

《『book cafe火星の庭』 店と商品と客がそれぞれに響きあう》
古本屋であり、カフェでもあり、パンなどの食品も取り扱っている火星の庭には、様々なニーズの客が訪れる。客の主体性を大事にしたいという店主の前野久美子さんは、基本的には積極的に客とコミュニケーションをとることはないというが、「何か聞かれたら結構話す」と笑う。
「このお店の役割と言うと重くなって嫌なんだけど、引き継ぐ、取り次ぐみたいなことかなと。色んなニーズで来る方に対して、どこに行ったらいいかとか、誰に聞いたらわかるだろうかというのを私が思いつく範囲で振る、その振る役目なんですよね。きっかけ作りですよね」
火星の庭で生まれたきっかけが、ときにイベントとして結実することもある。開店以来、詩人でシンガーソングライターの友部正人のライブ、本の持ち主を表す蔵書票の展示会、製本教室、東京で話題になった「一箱古本市」の仙台版など、様々なイベントを店内で行ってきた。
「ウチでやるイベントはほとんどが持ち込み企画。カフェと古本屋をやっているとおのずと色んな人が集まってきて、ここで何かやろうという感じで自然発生的にイベントの企画が持ち上がる。この店は来る人とか集まってくるモノで構成されていると思うから、私がやることは交通整理みたいな感じ」と、前野さん。
商品のひとつひとつ、訪れる客の一人ひとりが火星の庭という場で一緒になることで、それぞれに響き合い影響を及ぼし合って新しいアクションにつながる。与えられるものを消費するだけではない主客一体の買い物のダイナミズムがここにはある。
※この続きは、IN FOCUS Vol.1でどうぞ。

《編者から》
現在の買い物では、貨幣の持つ無縁性が大きな意味を持っています。私たち買い手は代金さえ支払えば、売り手と言葉を交わさず、目を合わすことすら必要なくモノを手に入れることができるようになりました。私たちは地縁や人間関係から開放され、日本中どこへ行ってもフラットにモノを買うことができるのです。でも、あらゆるモノが容易に手に入るようになった反面、売り手と買い手の結びつきは希薄になり、買い物という行為は極度に均質化しました。
元来買い物は、売り手と買い手が互いの存在を認知し尊重することを前提とし、そのために商品の質や安全性が担保されていたり、買うという行為そのものに体験的な喜びがあったはず。このような買い物の付加価値を今も大事にする小売りを訪ね、買い物のあり方を見つめ直します。

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相沢 由介

1980年生まれ。 インフォーカスの取材・編集・発行を全て一人で行っています。その他、フリーのカメラマン・ライターとして、紙媒体の企画や取材、企業や個人事業の広報物・WEBサイト等の作成を行っています。

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